埼玉新聞「【視点の始点】大学選択を考える座談会」特集をアップしました

大学選択は偏差値?現役高校生と大学教授が本音で語る進学先への想いとは

座談会は県立松山高校の教育資料館「松高記念館」(写真奥)で行われた

高校生は大学進学で志望校をどう選択するのでしょうか。跡見学園女子大学の西原麻里准教授と十文字学園女子大学の小林実教授が、県立熊谷女子高校と松山高校の新聞部員と語り合いました。探ったのは、大学で何を学びたいのかを見つめ、その先にある「どう学ぶのか」を選択する視点。教授が身近に思えた。進学先を考える視野が広がった。別学を考える新たな視点に気づいた。高校生が見つけた「視点の始点」を紹介します。

大学選択 重視するのは

黒澤香菜さん
熊谷女子高校
新聞部2年

4年間学ぶことを考えて、やりたいことや関心があることを重視します。就職を考えると、知名度も大事だと思います。

飯田美結さん
熊谷女子高校
新聞部2年

やりたいことが見つからないので、就職実績を重視します。自分の偏差値に合っていることも大事です。

福島圭翔さん
松山高校
新聞部1年

やりたいことは大事ですが、合格しなければ意味がないから偏差値も大切。

大下裕斗さん
松山高校
新聞部1年

同じです。やりたいこと重視ですが、偏差値も考慮しないと始まらない。

長塚奎さん
松山高校
新聞部1年

やりたいことに加えて、資格取得や就職実績が大事だと思います。同時に偏差値や知名度も考慮します。

松井心佑さん
松山高校
新聞部1年

教員を目指しています。偏差値を重視しますが、付いて行けないのは心配です。

山中春音さん
熊谷女子高校
新聞部1年

将来は関心があることを仕事にしたいと考えているので、より高い目標に向かうために偏差値を重視します。

加藤里菜さん
熊谷女子高校
新聞部1年

大学では関心のある分野を学びたいと思っています。

高橋芽呂羽さん
熊谷女子高校
新聞部1年

教員を目指しているので、資格取得を重視します。

小林実さん
十文字学園女子大学
教育人文学部
文芸文化学科教授

生活形態や価値観は人それぞれですから、自分に合う生活環境を重視してほしいと思います。大学選択は、住宅の物件探しにちょっと似ていると思います。

西原麻里さん
跡見学園女子大学
文学部
現代文化表現学科准教授

私の場合はオープンキャンパスが決め手になりました。最初は偏差値や知名度が手がかりにはなりますが、その先は現場で分かること。肌感覚や勘が頼りになります。ぜひオープンキャンパスに来てほしい。

 

大学の学びとは

小林実さん

日本近代文学が専門で、加えて翻訳文学を研究しています。かなりマニアックな領域で、大学院での研究経験がないと理解するのが難しく、研究を学生に披露する機会はほとんどありません。
一方、私のゼミでは、アイドルを研究している学生もいます。文学研究はメディア研究でもあって、実は社会学の要素がとても強いのです。学生は人気の背景や、アイドルの個性やビジネス戦略などを研究しています。学生と話し合いながら研究方法や論文構想を練りますが、学生のやりたいことに合わせて1対1で進めることが多いです。

黒澤香菜さん


オープンキャンパスでは、先生やゼミの紹介はほとんどありません。ゼミ生の研究テーマが身近で、興味がわきます。

飯田美結さん

ロシア文学は難しそうですが、小林先生のゼミではアイドルの研究ができると聞いて親しみがわきました。

西原さん

活動内容をインスタグラムなどで発信しているゼミも増えています。私のゼミではゼミ誌や卒論誌を作成して、オープンキャンパスで公開しています。

小林実さん

うちの大学は模擬授業で、高校生の関心を引くテーマを扱います。時々で教員は異なりますが、私は「バカ世界地図」を使って教養の大切さなどを教えます。

西原さん

大学でやりたいことは、職業と結びついていますか。それとも人生の目的ですか。

松井心佑さん

職業と結びついています。

長塚奎さん

将来は趣味を仕事にしたいです。

大下裕斗さん

趣味を深めたいと思っています。

福島圭翔さん

カメラが楽しくて、いろんな場所へ行ってみたいので、地理を学びたいです。

飯田美結さん

就職とは別です。大学で学びたいことを見つけたいと思っています。

黒澤香菜さん

職業とやりたいことが同じなので、就職実績を考慮して選択します。

山中春音さん

職業と結びつけて、経営分野を学びたいと考えています。

加藤里菜さん

職業とは別です。4年間はやりたいことを学びたいと思っています。

高橋芽呂羽さん

職業とやりたいことが同じです。

西原さん

興味深い回答です。私は大学の学びが必ずしも具体的に職業と結びつかなくてもいいと考えていて、むしろ充実した4年間であってほしいと願っています。ただ、就職を重視する声も根強くてジレンマも感じます。

小林実さん

大学は就職実績で評価される面があって、国も実績を求めるし、ビジネス誌は就職に強い大学ランキングを発表する。私は働きたくなかったから教員になったのに、疑問を抱きながら研究しています。

別学 新聞で伝えるなら

西原さん

以前いた大学は、男子学生が1割でした。なのに、グループワークのリーダー役はたいがいが男子。女子の声に押されて引き受けるのですが、違和感がありました。人それぞれの特性は、性とは別。ジェンダーを気にせず役割を果たすという気づきが、別学の良さです。そんな経験がありますか。

黒澤香菜さん


性とは無関係に生活しています。

高橋芽呂羽さん

例えば力仕事は、できる人がやるようになって、自立している気がします。

加藤里菜さん

役割を意識するよりも協力して一つのことをやる感じで、自由を感じます。

山中春音さん

もし、男子がいたらきっと頼むのでしょうが、みんなで力を合わせます。

飯田美結さん

力仕事は協力しないとできないから。

小林実さん

男子校では、伝統的に女性の役割とされてきたことをどう分担しますか。

長塚奎さん

例えば合宿での洗濯。動ける人が率先して早く終わらせて遊ぶ。明確な役割分担はないですが、やればいいという感じです。

松井心佑さん

裁縫や料理が得意という人はいる。でも、明確に分担することはないです。

大下裕斗さん

バレンタインでは、男同士でチョコを贈る。やりたいことをやっていく中で、役割が自然に決まっていくと思います。

福島圭翔さん

役割を意識したことはありません。

小林実さん

面白い意見です。ただ、今の社会はそうなっていないのだから、別学はまだ必要ということだと思います。
実は共学化もいいと考えています。松高新聞によれば反対が約7割とか。そこには校風が変わることへの抵抗感があるように思えます。冷たい言い方をすれば、共学化は新しい文化を受け入れるかどうかの問題だと思います。ただ、別学はブランド。その特長は志願者募集に生かせるとも思えます。

大下裕斗さん
松山高校
新聞部1年

中学生へ新聞で松高の良さを伝えるなら、見出しに個性という言葉を使います。自分をさらけ出せる良さを伝えたいです。

松井心佑さん

松高の実態を知ってほしいので、楽しいと伝えたいです。

黒澤香菜さん

見出しにストレスフリーを使います。

加藤里菜さん

性を超えて個性や特技を発見する機会がある場所、自分が見つかると伝えます。

西原さん

高校生の話を聞く機会はなかなかないので新鮮でした。SNSのDMでいつでも連絡ください。ありがとうございました。

小林実さん

皆さんともっと話したい。小林に会いたいと広報課へ連絡をください。いつでも大歓迎です。ありがとうございました。

2025年3月28日付埼玉新聞「大学選択を考える座談会」